今、私がこうして在るのは、王家の多大なる援助のおかげです。
貴族とは名ばかり、思うような教育を受けることすら難しかった我々に、あの方は目をかけてくださった。
私は一生、その恩を忘れず、王家に絶対なる忠誠を誓います。
「素晴らしい演奏だった、フェリエル
最早、君ほどの音色を奏でる者は、そう居ないだろう」

「何よりのお言葉でございます、王子」

「先だっての夜会の時といい・・・
礼をせねばなるまいね。何か望みは?」
「礼など。とんでもないことでございます」

「私を礼儀知らずにする気かね?
言いたまえ、何でも構わない」

「・・・・では、またこのような機会を、お与えくださいませ」

「君は欲が無いのかね」
「貴方様の、貴重なお時間を頂戴したいと申し上げているのです。
たいそうな欲張り者では有りませんか?」
「全く・・・、いつもそのような調子だな。」

「・・・そう、ユリエンは未だ音沙汰なしかね?」

「はい。・・・・申し訳ございません、王子」

「君が何を詫びる必要がある」
「貴方様にあのような非礼を働き、そのうえ・・・」
「私は何も気にしていない。君が気に病むこともないよ」
「・・・・・」

「さて、慌しくて済まないが、私はこれから研究室の方に行かねばならん。
フェリエル、また近いうちに使いの者を遣るが構わんかね?」

「はい、心よりお待ちしております」

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