それは、珍しくヘクターが、少し長い休暇を取って帰ってきた、その夜のこと。
将来のことは、いずれ考えねばならないにしろ、急ぐことは無いと思っていた。
父上はご健在なのだし、何か問題が起こっているわけでもない。
・・・でも、もう決めなければ。
「ああ、なんてこと!
私が・・・グラスなんかに薬を入れておいたから・・・
ヘクター!」
・・・誰か呼んでる・・・・? 兄さんの声? どうして?
眠い・・・
ああ、・・・また夢
また、貴方の夢だ
俺は貴方のことばかり考えている
貴方の幸せを何より願う。
だから家を出た。
俺の想いが、その妨げにならぬように・・・・
「ヘクター!
眠っている、だけ、・・・・だよね?」
今日は良い夢だ
「あ・・・良かった。
そんな悪い薬じゃない、睡眠薬なんだけど・・・
作用が強いと聞いてたから・・・」
貴方が微笑んで、そばにいる
「ヘクター。ごめん、ぼんやりするよね。
気分は悪くないかい?
起こしてごめんよ。
大丈夫なら、朝までゆっくりお休み・・・
誰より愛おしい、俺の・・・
「ヘクター・・・・?」