相反する二つの望みが胸のうちにあったなら
より大切なほうを叶えるために、もう一つは捨て去らなければならない。そうだろう?
「おかえり、ヘクター!」
「・・・・! ただいま、兄さん。
こんなところでずっと待っていたの?」
「そうだよ。お前ときたら、ちっとも帰ってこないのだから・・・・」
「・・・・・」
「今回はゆっくりできるんだろう?」
「明後日に、軍に戻るよ」
「明後日?!またそんなに早く?」
「長期休暇じゃないんだ。家の用を済ませに戻っただけなんだから」
「・・・・・。
こんなところで話していても・・・ね。 屋敷にもどろう。
疲れたろう? ヘクター」
「またあとで話をしよう」
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「ヘクター。本当に明後日、戻ってしまうのか?」
「ああ、帰るよ。急ぎの書類はもう片付けたし・・・明日に発ってもいいくらいだ」
「・・・『帰る』だなんて。お前の家はここだよ、ヘクター」
「そんなに急いで、戻る必要はないんだろう?
あまり寂しいことを言わないでおくれ」
「兄さん・・・・」
「お前が帰ってくるたび、こんな話をしている気がするよ」