相反する二つの望みが胸のうちにあったなら
より大切なほうを叶えるために、もう一つは捨て去らなければならない。そうだろう?








「おかえり、ヘクター!」




「・・・・! ただいま、兄さん。
こんなところでずっと待っていたの?」






「そうだよ。お前ときたら、ちっとも帰ってこないのだから・・・・」

「・・・・・」

「今回はゆっくりできるんだろう?」





「明後日に、軍に戻るよ」

「明後日?!またそんなに早く?」


「長期休暇じゃないんだ。家の用を済ませに戻っただけなんだから」




「・・・・・。
こんなところで話していても・・・ね。 屋敷にもどろう。
疲れたろう? ヘクター」



「またあとで話をしよう」






++++++++++++++++++





「ヘクター。本当に明後日、戻ってしまうのか?」




「ああ、帰るよ。急ぎの書類はもう片付けたし・・・明日に発ってもいいくらいだ」








「・・・『帰る』だなんて。お前の家はここだよ、ヘクター」


「そんなに急いで、戻る必要はないんだろう?
あまり寂しいことを言わないでおくれ」


「兄さん・・・・」

「お前が帰ってくるたび、こんな話をしている気がするよ」




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