「・・・・あなたは寂しいんだよ。
こんな広い屋敷に、使用人とばかりいるから。
前にも言ったけれど・・・
妻を娶って、子をもうけて・・・そうして暮らしたらいいじゃないか。
あなたはこの家を継ぐ者なんだから」
「そんなことをしたら、お前はますます戻ってこなくなるだろう?!」
「ヘクター、私と居るのは苦痛か?
お前が戻らないのは、軍務が忙しいからじゃない。私を避けているからなんだろう?」
「・・・そんなことはないよ」
「この家のことだって・・・私とお前、二人でやってもいいじゃないか」
「・・・無理だよ。
それにいずれ・・・考えなければならないことだ」
「・・・・・」
「もう・・・やめよう。
いつもこうだ。
私が何を言っても、お前は困った顔をするばかり」
「・・・・・」
「せっかく、久しぶりに戻ってきたのに・・・」
「兄さん」
「おやすみ、ヘクター。
明日は・・・私に付き合っておくれ」
「・・・・おやすみ、兄さん・・・」