あれから、ヘクターと顔を合わせていない。
あまり帰ってこないのはいつも通りだけど、
いつもは寂しく思うそれを、今は少し、ほっとしている。
「ねえ、肉親や友人に対する愛と、いわゆる恋愛というのは・・・・どう違うのかな」
「ごく端的に言えば、肉体的な関係を持ってもいいと思うかどうかではないでしょうか」
「・・・・ひどくはっきり言うんだね」
「下世話な表現でしたらすみません」
「あ、いや・・・」
「ああ・・・・でもそういうことなのかな」
「たとえば、貴方は私を親友として見てくれていますが、
私とそのような関係を持ちたいとは思わないでしょう?」
「思わないね・・・」
「ふふふ、私も思いません。
一先ずは、そのような考え方でも構わないのではないですか。
無論、私なりに深く思うところはありますが、あまり不用意なことを貴方に言いたくありません。
これが相談事であれば尚更に」
「・・・・」
「想い人ができましたか?」
「・・・よく、わからないんだ。私はあまり、そういうことに興味が無かったものだから。
こんな歳になって、恥ずかしいのだけれど」
「恥ずかしくなんてありませんよ。」
「君には想う相手が居るのだよね」
「ええ、います」
「そして兄上・・兄弟も居る。私と近しい境遇だし、君なら分かってくれると思った。
でも・・ごめん、まだ多くは話せないんだ」
「私でよければいつでも相談に乗りますよ。
純粋なエミール。貴方に想われる方は、本当に幸せだと思います」
「・・・ありがとう」