『ユリエンは未だ、音沙汰なしかね?』





『君には兄上・・・兄弟も居る』





皆、どうして、あの人のことを口にするのだろう。


なぜ忘れてしまわないのだろう。









忘れてしまえばいいのに。






何もかも捨てて出て行った、自分勝手で無責任なユリエン。
きっと帰ってくることは無いのだから・・・










いや、本当は分かっている。卓越した才というものは人の心を捉え、
そう簡単に存在が失われることは無い。




なぜ・・・
なぜあのような人に・・・









・・・やめよう。
考えるほどに、己の器の小ささを、心の醜さを思い知らされるだけ。







ユリエン、願わくば、二度と貴方が私の目の前に現れることの無いように・・





モドル